茅葺き屋根の施工で生じる古茅や加工くず、これらの植物由来の資材は、炭素を豊富に含む有機性原料であり、堆肥化によって土壌改良資材として再活用が可能です。

古茅に米ぬかや落ち葉などを混合し、適切な水分と空気を保ちながら積み上げることで、糸状菌や枯草菌といった好気性微生物が繁殖し、セルロースやリグニンを分解。微生物の活性により発酵が進み、植物に有益な腐植物質を含む良質な堆肥が生成されます。

この堆肥を施用することで、土壌の団粒構造が形成され、通気性・保水性・排水性がバランスよく改善されます。結果として、根圏環境が安定し、作物の健全な生育が促されます。

農薬や化学肥料の高騰、輸入依存が進むなか、こうした微生物の力を活かした無農薬・低投入型農業は、環境保全と生産の両立を目指す上で重要なヒントとなるでしょう。茅葺きの現場から生まれる自然循環の知恵が、これからの農業の可能性を広げていきます。